Technology & Design Department SREチームのUsekです。
昨年11月末にAWS Solution Architect Professional(AWS SAP)に合格しました。
自分で言うのもアレなのですが、この資格はかなりレベルの高い資格です。
そのため画面に”合格”と表示された時には自分の見間違えと疑い、正式に合格通知が来るまではつぶやけなかったくらいです(笑)
インターネット上には合格記を書いている方はたくさんいらっしゃいますが、せっかくなので私も合格までの軌跡を記します。
ちなみに勉強期間は1年になります。ネット上には2ヶ月で合格、3ヶ月で合格、という記事もありますがその人たちに比べると私の学習は泥臭いものでした。
私は元々クラウドの豊富な知識も、業務経験があったわけではないので、同じような人にとって参考になると幸いです。
AWS SAP とは
AWSはいくつか資格を用意していますが、その中でもAWS Solution Architect Professional、略してAWS SAPは上位の資格の1つです。
AWS におけるシステムの管理および運用に関する 2 年以上の実務経験を持つソリューションアーキテクト担当者を対象としています。
AWSにおける多種多様な知識と、その名前の通り「解決策を描く能力」が要求されます。
バレットグループに入社する前に、クラウド時代の技術トレンドを把握したいと考えAWS Solution Architect Associate(AWS SAA)は取得していました。
しかし、SAAと比べるとSAPは全く別物の試験といえます。
まず、言うまでもありませんが難易度が違います。
SAAはAWS内の各サービスの知識を問います。
一方SAPは知識を前提として、複数のサービスを組み合わせて最適な解決策を問います。
提示されるシチュエーションは実践的かつ広範囲です。SAAでは出題されないサービスも多数問題として現れます。
私が受けた時のSAAは正答率65%で合格だった記憶がありますが、SAPは正答率を75%必要とされます。この10%が非常に大きいです。
次に、たとえ十分な知識と経験を持っていても、その回答が最適でない場合は間違いになります。
模擬問題で回答を見ても「本当にそうか?自分の考えのほうが正しいのではないか?」と納得がいかないこともありました。
私は前回の記事で書いたように、セキュリティを担当しているということもあり、
”費用がかかっても安全な方法を採用したい”という思いがあります。
しかし回答では「その回答はセキュリティとして過剰、費用がかかるから不適」となります。
どこまでが過剰なのかを判断することは難しいですが、×は×、受け入れるしかありません。
最後に試験のボリューム。制限時間の180分で75問を解く必要があります。
1つの問題を2分半で回答する必要がありますが、問題文は長文が多く、じっくり読んでいると時間が足りません。
プロフェッショナルにふさわしい実力を持っていたとしても、試験の時間配分に慣れていないと”そもそも75%問いていない”ということにもなってしまうでしょう。
余談ですが、試験問題が英文を機械的に和訳したものなので、カタカナ用語が多いこともあり、意味がわかりにくい問題文が表記されることがあります。
試験では英語の原文も見ることができるので、日本語が腑に落ちなかったらそちらを見るとよいです。平易な英語で書かれています。
なぜAWS SAPを受験しようとしたのか
AWSを本格的に業務で利用するようになったのはバレットグループに入社してからになります。
バレットグループは提供するサービスの大半でAWSを使用しているので、知らないでは済まされません。
業務で使用しているサービスを都度調べているだけでは成長スピードが上がりませんし、
今現在使用していないサービスを利用した新しいシステムを生み出すことも難しいでしょう。
自己研鑽と実益を兼ねて試験勉強に取り組もうと決めました。
最初に書いたように、AWS SAPは2 年以上の実務経験を想定しています。
業務でAWSを使い始めてから1年で取得するという、自分にとっては高い目標を定めました。
1度目の受験(2020年6月)まで
入社直後の2019年10月に開催されたAWS Innovate オンラインカンファレンス
AWS Innovate オンラインカンファレンス 〜初心者から上級者までクラウドの最新情報がわかる 60 セッション〜
内に「AWS認定-試験対策-ソリューションアーキテクト-プロフェッショナル-」のカンファレンスがあったので受講しました。
どんな分野が出るのかを簡単な模擬問題を含めて説明を受けました。
これを視聴した当時は「そんなに難しくなさそう」と考えた記憶があります(苦笑)
次にExam Readiness: AWS Certified Solutions Architect – Professional (Japanese)という
公式のトレーニング(英語の翻訳が画面下に表示される動画)を受講しました。
内容はそれほど濃くありませんし、すぐに修了しますが、雰囲気を掴むには良いコンテンツだと思います。
こちらのサイトはいわゆる「黒本」と呼ばれるもので、SAAでお世話になった人もいるのではないでしょうか。
有料ですがSAPをはじめ、AWSの資格の問題がたくさん載っています。
ですが、個人的な印象として、「ちょっと本物の問題とは趣が違うな・・・」という印象です。難易度も本物のほうが高いです。
SAP自体が近年大きく改訂されたことも影響しているのかもしれません。
こちらのサイトの正解率が高いことは重要ですが、高いならば試験に合格するか、といわれると「NO」だと思います。
Jayendra's Cloud Certification Blog
外国人の個人ブログですが、AWS試験界隈では有名どころです。
というよりSAPの勉強方法は限られているため皆ここに行きつきます(笑)
各ページをGoogle翻訳して学習しました。手を抜かずに一つ一つ分からない単語を調べていくと結構な時間がかかります。
それでもAWSサービスの使い方を深く、かつ短い文章で説明してくれているこのサイトは大変役に立ちます。
AWS 認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナル模擬試験問題集
普段からお世話になっている動画学習サイトUdemyにある唯一の日本語の模擬問題集です。
出てくる問題の雰囲気は本番に近いですが、やはり本番より難易度は低いと思います。
とはいえ貴重な模擬問題集。ここに書かれていることは全て覚えるつもりで学習しました。
上記の模擬問題を何回か繰り返し、非常事態宣言が開けた6月末に試験を受けました。
・・・が、もう途中から「これは無理だ」となりました。事前に学習した問題よりずっと難易度は高かったです。
SAPの問題は広範囲に及びます。模擬問題に出てこないかつ通常業務で使わない知識が要求されるとお手上げです。
60%とぜんぜん足らず不合格でした。
2度目の受験(2020年11月)まで
AWS SAPの取得を諦め、目標も達成できないと気落ちしていたところに以下の書籍が発売されました。
AWS認定ソリューションアーキテクト-プロフェッショナル 試験特性から導き出した演習問題と詳細解説
念願の日本語のAWS SAP本。未だにSAPの日本語参考書・問題集としては唯一のはずです。
SAP合格に必要とされる様々なサービスがカテゴリーごと網羅的かつ分かりやすくまとめられています。
最後に掲載されている模擬問題も実践の問題に近いです。
この本に書かれている内容はJayendraさんのブログと併せてすべて頭の中に叩き込もうとしました。
やる気が再度燃え上がり、前回の試験の感触から「まだまだ足りない」と考えさらに学習教材を探すことにしました。
Well-ArchitectedはAWS公式の「AWSを活用するためのベストプラクティス集」。
業務で度々目にする内容ですが、今一度初心に帰ろうと、内容を一通り読みました。
記憶から漏れていた知識・サービスがあることに前回の学習がぬるかったことを再認識し、ノートにまとめました。
AWS Certified Solutions Architect Professional Practice Exam
もう日本語教材だけなどと甘えていられない、とUdemyで英語の問題集を購入しました。
先紹介した日本語のUdemy AWS SAP対策と似た内容でした。こちらを日本語の模擬問題同様75%正解できるように何回も解きました。
何回やっても覚えられないものですね・・・。
Ultimate AWS Certified Solutions Architect Professional
こちらは問題集ではなく、AWS SAPに出題されるサービスと抑えるべき勘所をスライドで紹介している動画コンテンツになります。
”Ultimate”すなわち”究極”とタイトルされていますが、素晴らしい内容でした。実際この内容から出題された記憶もあります。
ボリュームが多い上に全文英語なのでやり切るにはエネルギーが必要ですが、私を合格に導いてくれたと思っています。
かなりお高いので割引のタイミングを逃さないようにしましょう(笑)
1回目の挑戦で用いた模擬問題を含め、何回もやり直ししました。
当初11月の3連休前に受ける予定でしたが、悔いを残したくないと思い1週間先にリスケしました。
世間では3連休Gotoとかなんとか言われていたみたいですが、朝から晩まで試験勉強漬け状態でした。
2020年は不幸にも行動が抑制される一年でした。ただ、「コロナのせいで停滞してたまるか」という気持ちは持ち続けていました。
2回目の試験は1回目とはぜんぜん異なり、かなりの手ごたえがありました。
すべての問題を解いた後、もう1回見直ししてなお時間に余裕がありました。1回目はいくつか問題を飛ばしてギリギリ終了だったような。
それだけの手応えがあってもなお、試験終了のボタンを押すのは非常に緊張しました。
最初に書いたように、画面に合格の文字が出た時には最初書いたように、見間違いを恐れて喜ぶことができませんでした。
合格スコアはかなり薄氷で、これだけの手ごたえがあってなおギリギリなのか・・・と改めてAWS SAPの難しさを再認識しました。
AWS SAPを取得した結果、AWSについてまだまだ理解が足りないということが理解できました(笑)
資格取得後
せっかく得た知識も使わないとどんどん忘れていってしまうものです。
幸い他メンバーがAWSのアーキテクチャの成否や、実現したい要望を私に相談してくれます。
(知らないことばかりだな・・・)と調べながら回答しています。
AWS SAPを取得し、AWSのことがまだまだ分かっていないということが分かりました(笑)
そもそもAWSも物凄いスピードでサービスが追加・更新されています。
たとえば、私が試験を受けた2020/11/22時点ではKinesis Data Streamsのデータ保持期間は1週間でした。
「長期間のデータ保持にKinesisは向かない」とされていましたが、AWS re:Invent 2020で保持期間1年のアナウンス。
これまでシングルAZにのみ対応だったRedshiftが別AZに移動できるようになったり、これまで使えなかったDNSSECをRoute53がサポートされたりと、早くも知識が古くなっています。恐ろしい・・・。
最後に
バレットグループはAPN(AWS Partner Network)に所属しています。
AWSのパートナーを名乗るに相応しい会社であるべく、私以外のメンバーも学習と研鑽を続けています。
今後もAWSのみならず、様々な技術に関してカラフルバレットで発信していけるよう、頑張ります。